高畑耕治『死と生の交わり』


りんどう


できることなら
りんどうになりたいのです
ふかむらさきのりんどうになりたいのです

あなたが悲しむとき わたしは 愛します

ひとりのひとから ひとりのひとへの
言葉ではこわれてしまう ささやきでさえこわれてしまう 思いを
はりつめきずついた瞳 みつめてくれる瞳をこわさないよう
悲しみをながしだす涙になって
そっとつたえる
りんどうになりたいのです

もう ひとにはなりたくありません

できることなら
つゆくさになりたいのです
田のあぜ道や山道のかたすみ
街中のアスファルトのすきまでも がまんします
ですから
誰もがみすごしていくような
ちいさなあおむらさき
みつめてくれるさびしげなひとを
風にそっとゆれ はげませる
むらさきつゆくさに
してください

きえることは こわいけれど
悲しくありません

きえさったあと
こわれていくこのからだを
土にして
じっとそのまま まっていますから
いつか
道ばたの
ちいさな花に
してください



「 りんどう 」( 了 )

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