高畑耕治の詩


歩いて、風を受けとりにゆく




ぽっかり穴のあいたなんにもない
底のない空のような
こころカラカラの日にも

雲ばかりに埋もれ
灰色に重く澱んで
生き苦しい日にも

目をあけ
見あげたら

こころ空につながった広がった
どこか遠くへ開いた
気がした

立ちすくむこころ
言葉なくカチコチ
枯れ木枯れ枝のまま
折れそうな日にも

虚ろな静けさに
黙り込み空洞の幹であるまま
腐蝕してゆくばかりと
諦めそうな日にも

歩いて
風を受けとりにゆく

まだこころの木の葉そよぐこと
言の葉さやぐことささめくこと
思い出すため

風の音にくすぐられ
このこころにもまだ
若葉の声を
新緑の木漏れ日を
見つけることができたなら

言葉なくしてないこと
あなたに
伝えたいって
願うんだ

あなたはわたしの
大切なたいせつなひとだと
揺れふるえささめくんだ

あいたいあいしたいあいしあいたい

風にこころの若葉
奏でられるまま素直に
うたうんだ

五月の陽射しにひるがえる
新緑のおんぷ
弾ませ
伝えるんだ

好き好き好き好き

シジュウカラたちと
鳴きかわすんだ

優しく澄みきったあの声に負けず
こころ込め
さえずるんだ

好き好き好き好き好き好き

大切な小鳥に

愛するあなたに




* ルビ 埋もれ: うずもれ。風の音: かぜのね。



「 歩いて、風を受けとりにゆく 」( 了 )

TOPページへ

銀河、ふりしきる
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system