高畑耕治の詩


さくら、恋うた( く )

いまとばかりに



  やまざくら


やまざくら白い花あのひとの頬のよう
穏やかに紅( べに )さす葉のくちびる
あのひとのくちもとのよう
くちづけたくて届かない
美しく愛( かな )しい

たいせつな花



  いまとばかりに


散るものと知りながら
いまとばかりに咲ききそう
さくら

いまとばかりに



  花うた


夏の夕暮れ愛( かな )しみふるわせた
かなかなのうたもない
葉むらさやさやさやぐうたも忘れ
冬しのいだはだかの梢に
咲くさくらあなたは
なぜ美しく愛( かな )しくうたうの



  花恋い


さくらあなたのうすももの肌
ひかり透かして愛( いと )しい

花びらの重なり
ひかりと影の交わり愛( かな )しい

さくらうすもものまろみ
あのひとのちぶさのよう
愛( いと )おしい

うすももまとう枝えだ
あのひとのひふに浮きでたあの日の
静脈のよう
さくらさびしい



  憂うつ


さくら今朝わたし
こころなぜか悲しみもおど
憂うついろの花びらふかく
染めておくれ埋めておくれ



  春雨


さくら春雨にぬれ静かにたたずむ
あなたのしめり愛( いと )しい
あのひとの肌のあせのよう
あのひとのくちもともれる息のよう
さくらしめやかなあなた胸ふかくすいこみ
夕暮れ薄らあかりの
さくらいろにわたしを染める



  天の川


さくらあなたは
天の川銀河の

揺らめき眩しく
咲き乱れる銀河
星また星
美しく瞬く




「 いまとばかりに 」( 了 )

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