高畑耕治の詩


レモンお月さま、あおい星




こよいレモンお月さまのひかりの滴
夜空に沁みわたり
枯れ枝に星たち舞いおり
ほらオリオンも
ちいさな花びらならべ
話してくれるのです

大好きなあなたの
透きとおる声
すこしかすれた
さみしいかなしい
かすかなあの声で

だいじょうぶ
まだきっと
だいじょうぶ

夜ごとわたしが襲われる幻覚
赤黒くひしゃげた血眼の
ミサイル撃ち込まれた廃墟の
放射能と汚染水ばかりに覆われた
宇宙空間ただよう
いのち絶えた死の土塊

レモンお月さまと星たちのひかり
微笑みまじりの涙の滴
まるで優しい乳の滴り
しらしらしらら
降りしきります


おし潰されひしゃげてぺしゃんこの
この土塊
なぜだかやわらかな丸みを
たおやかなふくらみをおびはじめ

まるでひかりのプリズム
虹やどす水玉のように
黒み薄れるにつれ鮮やかな
赤オレンジ黄色移ろい
若葉のきみどり森の深みどり息吹き

海の波の透明なみどりしぶき
水平線のなつかしく淡いあお
海と空の交わりのあのかすむあおも
夕暮れ紫のしめやかな訪れに染まり
吐息もらし静もり

夜空の瑠璃色の音楽に溶けゆくまま
乳色の優しい滴りさかのぼり
天の川のたわむつらなりに
交わり溶けて
レモンお月さまと
星たちのひかりと
結ばれたのです

さみしかったかなしかった
この星ふたたび
ひかり揺らめきつづける
美しい瞳
海の星であること
思い出せたのです

レモンお月さま誰よりあなたに
親しいこの星
あなたのしぐさにせつなく
潮の満ちひきくりかえし
あわだちしぶく
あなた愛する星

だいじょうぶ

わたしの大切なひとが生まれ死んだ
愛するひとたちいま生きている
生き物たちと息してる
大好きなあおいあおい
海の星

きっと
まだ

だいじょうぶ




* ルビ 血眼: ちまなこ。土塊: つちくれ。



「 レモンお月さま、あおい星 」( 了 )

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