高畑耕治の詩


いのち、夏



殻を脱ぐため
コンクリート歩道の階段
懸命に登ろうと
せみ

行き交うひとに
いつものぼくのように
踏み潰されるから

のせて運んだ手のひら
いまは空

太い幹の根元の土から
かたい樹皮さぐりあて
登り始め

登りきり時満ちて
殻破り過去
脱ぎ捨て
飛び
舞い
歌う

せつなく

運命のせみと
いのち交え
未来やどし
死ぬ

いのち、夏
ぼくも生きたい




* ルビ 空: から



「 いのち、夏 」( 了 )

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