高畑耕治の詩


愛、空へ

  ははどり、羽ばたき


まろく ま白く はりつめる
たまごひとつ 巣にぽつん

あたためている
やま鳩 見つめあったよ
無心の きれいな瞳 きょとん
のぞいて ごめん

うおお うおお
はは鳩 胸ふくらませ 鳴くほどに

うぶごえ
涙だらけの
純 ひびき
生まれたばかりの けがれをしらない
純 ひかり

はぱばっ
はは 舞いおり

ぴいぴいぴいぴい
ひなよ ひな
あんまりおまえたち
うるさくかわいくかなしくないてくれるので
わたしもう ははどり
こころのちぶさ はちきれる

はは 舞いあがり
風を抱き
羽ばたき奏でる 愛しみの
       音色
    ♪へぴゅるえるね

    ヒュペリオン
   愛の
  詩の
 こだま
翔ける

空へ



  せみ、恋うた


土からでたばかり
羽根まだひろげられず
あおむけ
あし空にばたばた
せみ
助けてと
娘の目
木の根に そっと

夏は光も雨も吐きつくし
あちらこちら
あおむけ 羽根を土に
あし ゆるやかに
空つかむように
せみ

飛ぶ? あと
一度

 ( 死の
  永遠の
  手まえ
  つかの間のこの )

一瞬

手のひらけって
飛んでった

つくつくつくつく鳴きつくし

いのち終わる
おまえ そのあしで
樹皮を
恋ぜみを
強くつよく
愛しく
抱きしめたか?

つくつくつくつく泣きつくし
つくつくつくつく
愛 つくし

空へ


 * ヒュペリオン : ヘルダーリン『 ヒュペーリオン 』




* ルビ 愛し: かなし



「 愛、空へ 」( 了 )

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