高畑耕治の詩


愛しみの銀河


おなじ星の おなじ島国の
ちっぽけな都市で
あなたを 求め
遠く
さびしい夜道
天の川
見あげる頬に
ひかりのしずく
ひんやり

  夜空の
  永遠の

棺にあふれる白い花
埋もれ横たわるわたし
包まれている
生まれ
殺され
逝(ゆ)く
星のうえ
いちめんの
星の花に包まれている

とおいとおいむかしから
土に海に空に還った嘆きのなきがら
このまわるまるみのあちらこちら
たえまない戦争に壊されるこころとからだの
なきがら
星の傷みの悲鳴 災害に
巻き込まれた悼みようもない
なきがら
老いに病に息
とめられたばかりのなきがらも
はいはい始めたばかりの
いとけないなきがらも
生まれたばかりの
赤んぼのなきがらも
胎児のなきがらも
わたしの泣殻も いま
包まれている
天の川に

  いのちは
  詩
  死は

瞳 夜空色に染まるまで
星のしずくあび
ぷかぷかこの身
浮かべているのは
どうやら棺じゃありません
さまよう羊のような
わたぼうしのような
ほんわか星雲(ほしぐも)の
小舟
それはそれは果てしのない
旅でした

ちゃぷちゃぷ
うち寄せる星のエコー
ささ波に洗われ
わたしのからだの細胞は
恥じらいぷちぷち泡だち
つぼみひらけば水の花
ぷちゃぷちゃくちづけ
歌いだすのです

 ( たべたものはたべられたもの
  たべられたものはたべたもの )

ミジンコやお魚
みみずやアリさん
牛やブタさん
だいこんピーマン人参
むぎ そば おこめ
わたしの大好物
たべられいまはたべたわたしの
泣殻からこぼれ散った無数の花のしずくに
願いかおり
涙のシャボンのまろみにちいさな
虹をかけました
はかない旋律
七つの音色の橋をどこまでも
透明な姿かろやかに
おんぷとト音記号
わたってゆくのです

  生まれ
  生き
  死に
  生まれ

叩き潰された
優しさ
 ( とても )
掻き消された
微笑み
 ( とても寒いの )
凍りつき砕かれた

 ( たすけて )
逝ってしまった
 ( ゆるして )
しあわせの

 ( ゆるしてください )

しょっぱい涙に
闇は溶けてしまったのでしょうか
聞こえてくるのです

子どもの
はしゃぐ
女と男の
交わり昇りゆく


 ( どうしてあんなに
  澄みわたるのだろ )

優しい
美しい


 ( こんなに穢れきった
  獣なのに )

舞いしきるばかりの
ゆきの
ほたるの
乳色のしずく

 ( 獣にも
  ふりそそぐのは
  なぜ? )

赤んぼの
手のひらのような
つぶらな瞳の
瞬き

 ( ゆるして
    くれるの

  ね )

はじめての
 ( ひとりじゃない )
旅でした

  いのちは
  詩
  死は

  夜空の
  永遠の

天の川

宇宙の子宮の
波の
涙の
受精卵

生まれたときも
死にゆくときも

 ( 愛してる )

いつもいつまでも
ささやき
ささめきやまない
愛しみの

はあもにい

銀河ばかりがありました



「 愛(かな)しみの銀河 」( 了 )

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