高畑耕治の詩


小さな島、あおい星の乳房の

わたしのからだの片隅、細胞のどこからか、
歌が聞こえてきました。
耳を澄ますと、言葉の音楽、詩でしょうか?
風に運ばれて、ほら。

   *

ぼくが水面に顔だしてから
友だちは
口づけてくれる海の波
歌きかせてくれる潮騒
肌なでてくれる海風
水平線に昇る朝陽
水平線を沈む夕陽
ぽっかり青空の雲
海と空むすぶ虹
魚たち
海鳥(うみどり)たち

ぼくは誰?
ぼくは星の子ども
ぼくは海の友だち
小さな島

宇宙に生まれ宇宙をまわる
この星の
わずかなわずかな
でこぼこ
ひょっこり海面から
顔だしちゃった

ぼくは誰のもの?
ぼくはぼくのもの
宇宙をさまよい銀河を漂った
星くずの集まり
さすらいの果ての結晶
太陽まわる岩の肌
魚たち
海鳥たちの
亡き骸のねがいふりつもる山

星は宇宙の子ども
浮かびまわる水玉
あおい瞳
海と陸の
表情ゆたかなまるみ
美しい球

  国境なんて幻

この星に生まれたばかりの
猿から退化した我がまま動物の群れが
思いあがり威張り欲張り
いがみあい殺しあいまでして
でたらめな理屈のクレヨンで俺の俺のとわめきながら
奪い塗りつぶしたつもりの汚れもよう
金を崇め奉り権力を振りかざし疑いおびえ噛みつく惨めな
弱虫動物の習性滲んだシミ

大きな陸も小さな島も
大きな海も小さな海も
結ばれていること
見えない国家
水平線と地平線の遥かに
海と空と宇宙の
美しい口づけ
聴けない国家

ぼくは島
この星の子ども
海と空
魚と海鳥の友だち

身勝手な自国語ばかり押しつけたがる
身勝手な名前ばかり張りつけたがる
どんな国家も国民も迷惑
喧嘩するならあっち行け

海鳥さんは教えてくれたよ
我がままで欲張りで争うばかりなのは
あの動物ぜんぶじゃないって
海と空の あお
星の素顔 大好きな
ひとはいるって
海亀さんも伝えてくれたよ
水平線みつめ
自分も星の子どもだと渚で
優しく見守ってくれる
ひともいるって

海鳥さん ぼくは
あおい空にあなたが飛び立ち帰ってくる
夕陽に浮かぶやすらぎの巣でいられるだろうか?
海亀さん ぼくは
あおい海からあなたが卵を抱いて戻ってくる
真砂の星ふりしきる渚でいられるだろうか?

  幻の境界線なんていらない

あおい星のあおい海の
ぼくは
小さな島

   *

歌の風、聞こえましたか?
わたしですか? わたしは、
無限と有限のはざまの時空のからだの片隅の、
祈りと問いの曼陀羅もようのからだの片隅の、
宇宙の大規模構造の織物の泡もようのからだの片隅の、
おとめ座超銀河団のからだの片隅の、
局部銀河群のからだの片隅の、
アンドロメダ銀河と仲良しの天の川銀河のからだの片隅の、
太陽系のからだの片隅の、
小さな星、
お月さまと姉妹のあおい星、
あおい海にちょっぴり顔だしたあの小さな島の、
お母さん、
地球です。

毎日あの子は話してくれます。
海亀や魚やクジラやイルカがサンゴと海藻の森を、
どんなにゆったり旅していたか。
海鳥のひなが初めて羽ばたいた瞬間、時は止まり音は消え、
どんなにドキドキしたか。
ささめく木々の葉むらと草花たちは風に、
どんなに優しく歌をゆだねたか。
雨あがりの滴は虹の七色を映して、
どんなに美しく揺らめいていたか。
オリオンやカシオペア、北斗七星、すばる、
いちめんの星の光と、
お月さまのやわらかな光が、
どんなに愛しく溶けあい、
降りそそいでくれるか。

そう、
あの子は小さな島、
わたしの、この乳房の、
大切な子どもです。




* ルビ 水面: みなも。魚: うお。海鳥: うみどり。陸: おか。球: たま。幻: まぼろし。曼陀羅: まんだら。七色: なないろ。愛しく: かなしく。



「 小さな島、あおい星の乳房の 」( 了 )

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