高畑耕治の詩


羽の、スミレの旋律のように




  歌


羽のように
翔あがる
歌声は羽ばたき

風にのり白い雲に
曲に舞い躍り
青空へ

飛びつづけ越え
彼方まで
ゆけると
響いてゆく




  詩



花のように
飛べない
詩は野の花

あるかないかの
かすかな
光と影の
ゆらめき

身じろぎして
風のけはい
漂わせ
もらす吐息

なぜ

わずかな
うつむきの
うなずきの
きよらかな
うなじの姿そのまま
立ちつくし
息をつめ
息を止め
時を止め

さみしさの
結晶花

ひとひら

透明に
沈黙に
溶けさって
ゆき、を
恋う

生きることは病い
錯誤過失
痛み
かもしれなくて

翳るひだ静かに
歌声にのれない
言葉になれない
凍りの刺をうっすら
余白に刻む

まだない聴こえない
まだない見えない
消えて雪ながら
凍て果てて
息も
止まり
ふれられる
かおり
ゆきずりの
死生の
星の精
まどい
まとう

死のかげりの
幻の谷間
まぶしい
まどろみの
象徴花
またたくまの
祈り
織りこめられ
痛く
悲花
ゆらめく

五線譜の標のない白宇宙の
果てのはての美のありか
スミレ色の微光香る丘で
奏でられる音楽
沈黙の花言葉と
なれますことを




  スミレ旋律



終わりながら始まってゆく
まるい星たわむ地平線と水平線の果て
地と海と夜空が交わりあいくりかえし
約束しあう遥かなたどりつけない
あこがれの境界に

日の終わりに始まる夕闇
夜の終わりに始まる朝焼け

あわいに
あるようでないような
ないようであるような
あってもなんのいみもないことの
とおとくほこらしい
すぐ死ぬばかりの
ひとの

かなしみといたみ
いとしさふるえる
旋律
かそやかな
羽のように
花のように

うすやみ
あかときの
うす明かり
うす水色と朱色の
水彩もようのたなびきに
うっすら

はばたき
散りまた
咲き
泣き、笑む

悲とも
美とも
まがう
うつつまぼろしの
愛しみの
姿で

星の
スミレの
微香
静音
永遠
さしあおぐ

どれみふぁ







※読み 白宇宙: しろうちゅう。
   愛しみ: かなしみ。宙: そら。



「 羽の、スミレの旋律のように 」( 了 )

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