高畑耕治の詩


ササユリに捧ぐ




沈みきるまえふいに輝き増す
地平からの
光に透かされ
照らしだされ
うっすらまぶしい
花びら雲

この夏
地には
初めて
白ユリの花

セミの音ふりしきる
緑の草の濃い香りに
夕暮れわたしがふらふら
さまよい歩きだしたのは
呼ばれたからでした

くちびる可憐
白い花
きみに

「 あなたをお誘いしたのは
 いいえわたし
 白ユリでは
 ありません

 あの夕焼け色の
 はじらう頬
 ササユリの
 花の
 精 」

悲しみに
淡い色さえほのかになくして
透きとおる
まぼろしの花びら
真夏の光にも
ササユリきみは
愛にきてくださったのでしょうか

散りさり
過ぎさってゆくのは
美しく愛おしい
花たちばかり もう
とおくへ
ゆかないで ひとりにはもう
しないで

生まれ変わるなら
山あいの
せせらぎのほとり

絶滅まぎわの
ササユリの花




※読み 音: ね



「 ササユリに捧ぐ 」( 了 )

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