沈みきるまえふいに輝き増す
地平からの
光に透かされ
照らしだされ
うっすらまぶしい
花びら雲
この夏
地には
初めて
白ユリの花
セミの音ふりしきる
緑の草の濃い香りに
夕暮れわたしがふらふら
さまよい歩きだしたのは
呼ばれたからでした
くちびる可憐
白い花
きみに
「 あなたをお誘いしたのは
いいえわたし
白ユリでは
ありません
あの夕焼け色の
はじらう頬
ササユリの
花の
精 」
悲しみに
淡い色さえほのかになくして
透きとおる
まぼろしの花びら
真夏の光にも
ササユリきみは
愛にきてくださったのでしょうか
散りさり
過ぎさってゆくのは
美しく愛おしい
花たちばかり もう
とおくへ
ゆかないで ひとりにはもう
しないで
生まれ変わるなら
山あいの
せせらぎのほとり
絶滅まぎわの
ササユリの花