高畑耕治詩集『さようなら』


小鳥を愛したひとに



胸と胸 あわせ
手のひらに背なか
かんじあう しあわせ
愛( かな )しく泣く
あなた小鳥だったのですね

暮れてゆく空をかえりましょう
鳴きながらふたり飛んでゆきましょう
しなやかに腕ほそい指先をのばし
はばたく羽はなくても
腰をくねらせ背なかをうねらせおしりをふり
落ちてゆきながら生まれるかすかな風に
髪をなびかせ飛んでいるふりをし
ねむりを求めてさまようのです

あなたの乳房は淡く

 ( まるい月がうかんでいます )

ちいさな乳首のひかり

 ( いちばん星は )

耳たぶをくすぐり

 ( ささやきます )

うるむ瞳

 ( 夕陽は沈む瞬間 )

頬を染め

 ( 輝きをまし )

項はそり

 ( 頂の雪に )

もれる息が

 ( 白い雪に )

美しい声が

 ( 赤く )

高く

 ( 燃え )

絶えるのです

まどろみから目覚めまぶたをひらくと
あっ
あおい空の
羽毛
澄んだひかりに
抱かれていました
小鳥ほんとは雲だったのですね
やっとふたり死ねたのですね



「 小鳥を愛したひとに 」( 了 )

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