高畑耕治の詩


告別



花に生まれ
摘まれ
人の
棺に
供えられ

人とともに
炎につつまれ
花の姿であるままに

揺らめき
花びら燃えあがり
いのち
さようなら
しました

悲しくはありません
悲しみのあかり
ほっと
悲しいばかりです





葬送行進曲
星の花びら激しく散らす慟哭も
野辺送り
おぼろ月夜
寡黙かみしめる忍び音も

やるせなさのきわみの
おえつ
悲しみだとは
知りました

なくなりながら人は
泣くばかりなのか
くるしみながらも
ほほえめるものなのか

わかりません

悲しくはありません
悲しいのは
人ばかりではありません
花ばかりでもないと
知りました





炎のゆらめきさえ
透明な
涙色でした

あのぬれた光は
人の
花の
飛翔のうしろ姿
いのちの軌跡の
まばゆさではないのでしょうか


夜空には今宵も
星の棺
花ばなの捧げものに満ちて
虹の弧を描いて横たわり
幾年も幾年もながらく
いのちの記憶とともに燃え
咲き香りつづけるのだ


語り継がれてきた星と花と人の
伝説を
はじめてわたしも
生きました

星文字はなんだか
フ シ ア ワ セ
と描かれているようにも
想えました が

なきがらのそばの
星の花いちりん
初めの一文字だけ
涙でボカシ薄れさせ
ふっと優しく
吹き消してくれたのです

さようなら





「 告別 」( 了 )

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