高畑耕治の詩


なごりの滴り



しめやかな雨音にぬれうすあかり
しずかな藤の
吐息とともにいるのは

うすあおあわい花から花へ
蜜もとめくちづけうつろう
ちいさなむしたち
透きとおる無音の羽ばたきばかり

色の滴り愛したあのひとはみあたらなくて

ちりおちるいちまいいちまいしとやかに
花の房は細ってゆき

うすくくすんだきみどりやわらかな
葉むらに抱かれしどけなくかわいて
うもれてゆくばかり




*読み 雨音: あまおと。無音: むおん。



「 なごりの滴り 」( 了 )

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