高畑耕治詩集『愛のうたの絵ほん』


まる


20よ もう
ころころ転がる
まるい笑いっていいな
ころころこころ
跳ねて光って転がって
19年も生きてきたのよ もう
疲れちゃった でも声の
まるい響きは笑っているよ
あんまりおかしいと
かなしいこと考えるの
あんまりかなしいとき
おかしいこと 考えられないもの

退屈な教室 嫌いだった
窓のそと眺めながら両手で
耳をふさいでいた
うわんうえわん みんな
口うごかして笑いながらなんだか
鳴いてる せみみたい
異星人になったみたい
泣いてるんだってわかった
ぶわんぶおん
バイクの
空ぶかし思い出すから
好きだったの
夜の街 バイク転がすと風が
くすぐったくて
テールランプ かなしかった
あの赤い光 みつめる目は
きつねだったの ぴりぴり
アンテナ びんびん 張りめぐらして
触るなって ざけんなって
睨んでたの でもいまは
たぬきね 疲れちゃった
どこへ向かっても戻ってくる
まるい世界 回ってる
飛び出したいって転がりながら

ふふ
思い出すとなんだか頬がふくらむから
不思議ね
ほんとたぬきみたいだね
ぶっ
あっ( ふぐ ごめん )赤い風船
耳に手をあてふたり ふわん
空をのぼってゆこう 不安な
異星人のまま( 毒をもったふぐのまま )
からだまるめあい
ひとりぼっちの風船よりすこしはたふな
気球になって
汚れた空ですこしやすもう
どうでもよくないから睨んでしまう
きつねの目と 異星人の耳にしか
地球の青い涙はもう浮かばないから
気球の熱い息 吹き出して
もう一度 おちてこよう
憎みながら愛してる
このまるい星のうえ



「 まる 」( 了 )

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