高畑耕治詩集『愛のうたの絵ほん』


こころの水たまり


おばあちゃんの鏡は おかあさんの鏡
おばあちゃんがいなくなった日
鏡のなかのふたつの目から
水があふれた わたししってる
おかあさんの鏡は
涙にかわる 水たまりなの

おかあさんの鏡は おばあちゃんの鏡
おじいちゃんが戦争いっても しずかに
おばあちゃんをあらった鏡
死んだ知らせがついた日に
鏡のなかのふたつの目から
水があふれた おかあさんいってた
おかあさんの鏡は おばあちゃんの
涙がいまも たまっているの

こどもの頃 いつものぞいた
にらめっこ
みえない水の底にひかっているもの
わたしにもあふれないかな 鏡のなかに
はいりたいけどはいれないんだ

おかあさんの鏡は わたしの氷
おとなになっても ゆれない氷
世間むけの 仮面とるの
素顔のわたしをみつめるの
仮面つくるの 泣顔は
化粧でけすの でも

ひとを愛して わたししった
水たまり ほんとにあった
かたい氷 われてとけたの つめたい
ひかり はじめてゆれたの
鏡のなかのふたつのひとみに
水がしずかにあふれだしたの あたたかな
泉のふかさ はじめてしったの

ふるえるまつげは泉のほとりの野草なのかな



「 こころの水たまり 」( 了 )

TOPページへ

アンソロジーAいのち・かなしみ 目次へ

詩集『愛のうたの
絵ほん』 目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system