高畑耕治の詩


凍り紅葉



生きるためだと息をつめ
目を開けながらなにも見ないように
時をできるかぎり薄め
さらさら過ぎ去るように
疲れるためであるかのように
自食するかのように
あげく疲れ果てて

すがりつくように
あの美しい
秋の赤と黄に燃える葉にせめて
なぐさめもとめみあげると

モミジモミジもう
あるはずもない

瞬く間もないなんて
想うこともできず
過ぎ去る散り姿
見送ることもできず

モミジモミジもう
この凍える季節に
あえるはずもない

 痛みばかり傷みばかりではひとも
 生きられません

あたたかみが生きものに
息させるように
あまみもいのちの
ともしび燃やすから

枯れ散り地に堕ち
土まぶされ埋もれても

氷砂糖
氷菓子のように
氷土の底深く
赤く黄に
星色に
ふるえ瞬く

凍り紅葉
氷花の星と燃え
いつか
よみがえる日を

モミジモミジ
痛く硬く美しく
あまくあつく
光おびる火を




*読み 凍り紅葉: こおりモミジ。
   氷土: ひょうど。星色: ほしいろ。
   氷花: こおりばな。



「 凍り紅葉 」( 了 )

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