高畑耕治の詩


かすみ草



芸術者、広い意味での、
詩人にさえとりえが、なにかしら、
意味のかけらが、
のこされているのだとすれば。

傷みやすさ
ばかりだと思う。

痛みながら初めて
解き放てるものは、
香りか
腐臭。
美か
醜悪。
善いと呼ぶことをゆるされるなにかか
害悪。

悼みうなだれつつ
枯れゆく姿ばかりは、

あやふやなあやうい
その幻、
ゆらめきの
嘘。
闇をも、

はかなさの極まりで
真の
光の
花。
愛が。

ここではないどこかには。
かならず。

いま激しく
咲き生き散り息
絶えるかのように、

信じられずとも
殉じずにはいられないと、
かすみ草のような
かなしみに。

目眩ませられ、
ふるわせられ、
透かし彫りに

されながら
傷む。

みえずにある
こころ
戦慄する繊細な
細密画の旋律に
磔に

されて
痛む。

悼む。

いたまずに生きること、
ばかりはゆるされず。

かすみ草の
花嫁のように。




*読み 幻:まぼろし。
真:まこと。磔:はりつけ。



「 かすみ草 」( 了 )

TOPページへ

純心花
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system