高畑耕治の詩


瑠璃(るり)の石ころ



国家の名誉の名のもと
殺人を美化するのは
どの時代
どの大陸でも
選ぶことがましな
道じゃない

復讐を自賛し
報復を叫び
同調するのは
選ぶことがましな
道じゃない

人を殺し
また殺そうとする

道は地続き
無差別の
殺戮
戦争

集団強制連行に
ろくな行き先はない
死しかない

殺されていない者が
わめき
殺しを煽るのは
酔っぱらいの
脅しでしかない

泥酔者に
人を
殺させるな

殺人讚美の乱舞に
冷えきり凍えながらも
醒めていること

熱狂強制収容所で
砕かれ溶けさるまで
ゆるされるかぎり硬く
いのちの
氷になること

にごり汚れながら
小さくても
できるなら
道ばたに
石ころのように

瑠璃の音色たたえ
ふるえるふくらみ
水平線のまるみ
宇宙球面に
重なる日
夢み
ころころ
恋い
願いつつ

かさぶたに
隠され
覆われていても
やがて
ひき剥がされる日に

ひりひりこころ
痛めるばかりの
儚く
せめて
ルビーのように
あかく澄み切る
涙のまるみであれるように




*ふりがな 瑠璃: るり。復讐: ふくしゅう。
 殺戮: さつりく。行き先: いきさき。煽る: あおる。
 脅し: おどし。泥酔:でいすい。硬く: かたく。
 汚れ: よごれ。音色: ねいろ。儚く: はかなく。



「 瑠璃(るり)の石ころ 」( 了 )

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