高畑耕治の詩


やまゆり、白い花



 悲しい花


花はけんめいに生き
花をあやめない

ふくらみひらいて
泣いていた
オレンジのゆり
おにゆり

燃やされ涙
散らしているよう
ひとを想いひととして
生きることは
くるしい

穏やかなおとなしい
幼い花をさえ
ちぎり踏みにじり
嘲笑うひとの
みにくさ満ちる世は
むなしい

やまゆり白ゆり
どこにいったの
いつまでもそばにいて

やわらかな手に触れふれられ
微笑みの頬にくちづけ
咲いてくれたあのあたり

悲しくさがす
やまゆりの花



 哀しい花


傷つけた目に
ゆがみにじむ
憂うつなこの世

真夏の闇のこの朝にも
なつかしいあなたの
大好きな声
どこからか
まぶたにそっと

吹きかけてくださるから

あいたくて
みひらく
瞳の
痛みに
茂みの緑に



きらめき
ゆらめき

哀しくまばゆい
白ゆりの花



 星の花


「 思い出してね
 いつも
 あなたと 」

ふりあおぎ
青空の彼方
あなたの声に
こころ澄ませば
星空も

なきゆらめいて
白ゆりの花



 愛しい花


羽根ふるわせるセミの
さよならの季節に
最初のやまゆり
いちりん
かれん

花びらの
純白
汚された地に
うつむき
瞬き
羽ばたき

愛しく生きてゆけ
やまゆりの花




*ふりがな 愛しく: かなしく。



「 やまゆり、白い花 」( 了 )

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