高畑耕治の詩


いつか、秋の音 染みて



木の葉かなしみの音に
もみじするという

朝も夜も鳴くばかりなのに
なんてきれいな虫の音
あんなに激しく
消えてしまったセミの音
あれからいまもいつまでも
愛しいきみの音

汚いけどひとは
泣かずにいられず泣くしかなくて

好きだと泣いて言えずに泣いて
ふられて泣けるなら
愛したいのに愛せず涙にもうならなくても
泣いているのなら
ひともきれいになれるという

電車の座席のむごい大人に
にらまれても
泣いてあやされ
泣きたいだけ泣けるときに泣ける母に泣いて赤んぼ
きれいに育て

朝陽にも夕暮れにも
宇宙のかたすみのこの星の
いつかのどこかの
木の葉の根もとの草むらの
秋の音のそばでなら

ひとのこころさえ
もみじするという



 こだま


爆弾も飢えも差別も
もういらないと
虫の音も木の葉もひとの
こころも星の音もいう




*ふりがな 音: ね。木の葉:このは。夜: よる。愛しい: かなしい。



「 いつか、秋の音 染みて 」( 了 )

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