高畑耕治の詩


♪♪のメタモルフォーゼ




 あ

くちびるから生まれでたふたごの幼い♪♪は

泣きつくし羽たたみこわばり落ちてゆくばかりの亡骸の
嘆きにはならなければよいのに

透明な風にもつれ軽やかさ奏であうチョウチョにもなれず
岸辺の夕闇に乱れ舞うコウモリのさ迷いになっても

  あ
 あ

合歓の木の紅い花びらのやわらかな耳たぶを
たわいなくくすぐりあうやすらぎの声のように
こぼれおちたふたつの
黒い塊も悪魔の翼も
わけのない悲しみに洗われせめて
白サギの幻の
羽と魂にすがりつければよいのに

できることならいつか色もうしない
あわあわふるえるうすいひまくのまんまるの
赤んぼの瞳に
浮かべられた世界ありのまま映し写され
あなたを宿し
ふれてふたつはやがてひとつの
シャボン玉
とおくたかくあの夕日のむこうまで
ずっと

こわれてしずく散りぢり
夜空の星ぼし
憧れの天の川と
終わりもなく落ちてゆき
さよならしながら静かにただ

どこにともなくともにいる
あなたと


 あ

 あ
  い
   を

伝えあえられたならよいのに




*ふりがな ♪♪: おんぷ。メタモルフォーゼ: 変身。
      合歓の木: ねむのき。魂: こころ。



「 ♪♪のメタモルフォーゼ 」( 了 )

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