高畑耕治の詩


花のうたばかりを



 ドクダミ


真白あんなに
美しく咲かせて

ドクダミいま
真みどり
富士あおあお

暮れなずみ
夕がすみ
かなしいのは

ふいに降りそそいだあの
ことし初めての
かなかなのせい



 サルスベリ、ハギ


雨あがり
葉の水たまに

紅散りばめ
百日紅

うすもも淡くもう
秋ちいさく
やどしゆらめく
萩の花



 カワラナデシコ


夕雲うすもも白の縞模様に
羽ばたいてゆくのか
うつむくまつげ
やわらかに美しい
撫子

鷺草を慕い探して
翔てゆくのか

ふいにひき離されても
愛しいかけがえのない
亡くせないひと
なのに

撫子
あなたも
あてどなく空へゆくのか

小鳥いろとりどりの
写真集
好きだったきみ
きみはあの空のどこか
こころそのままでいられる
優しいところまで必ず
飛んで逝けたはず

悲しいことおおすぎる

泣きはらし
まぶたをとじて
花もいう



 シラユリ、キキョウ


裂けて咲け 白ゆり桔梗きよい花



 アジサイ


枯れた花はかなしくとも

干からびて
焦げ茶誇らしげに
紫陽花

降りやまないかなかなの
逆光にかがやく



 ヒマワリ


豪雨に猛暑に立ちすくめば
そばに

向日葵



 


花のうたばかりと
ひとのいう

好きだから花は
好きだから
 ( ひとは
  きらい )

でもひとも
花だからと

優しい
花はいう




*ふりがな 紅: くれない。愛しい: かなしい。



「 花のうたばかりを 」( 了 )

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