高畑耕治の詩


花、夏の記憶の



 広島、白い花


七十二年すぎても
あの日は原爆の
あのまま

うけつぐ祈りの
この夏にも

悲しく
訪れてくれた
つくつくぼうし

美しく
咲き初める
白百合の花



 長崎、赤い花


ゆらめきのびるなめらかな腕に
萌えるみどりも
燃え立つ紅の
花炎も
青空たかくへ
無言で

原爆のあの日を
生きていた
子どもたちと赤んぼに
子猫と子犬と子牛と子馬に
アサガオにヒマワリにタンポポに
アゲハにアカトンボにカナカナに
無明のくるしみに

百日紅
今朝も
赤い花




*ふりがな 白百合:しらゆり。初める: そめる。紅: くれない。無明: むみょう。百日紅: サルスベリ。
*参照 「夏の花」: 原民喜の小説



「 花、夏の記憶の 」( 了 )

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