高畑耕治詩集『愛(かな)


輪になって

ハーモニーって どこにでもある
モーテルのテカテカした看板みたい
でも道端のかえるに出喰わすように
いつもしんせん
ハーモニーって ずれること
ちがうこころの声は
交わりあえる
おんなじだったらかえるだってうたわない
はもりたい
きみと
こすりあいたい 満月の夜
ばいおりんの弓と弦は
ふるえあい
おとことおんな
ちがう生きもの
からだの声は
いつもしんせん
おんなじだったら響きあえない
ひとりうたがさびしいなら
ぴったりしないちぐはぐな
ハーモニーをうたおう

思いだしてごらん
楽しかった輪唱 こどもの頃
意味もわからずむきになって
顔じゅう口にしうたった
輪唱*
 しずかなこはんの
  もりのかげから
   もうおきちゃいかがと しずかなこはんの
    かっこうがなく   もりのかげから
     かっこう     もう       しず
    かっこう     おきちゃ     かな
   かっこう     いかがと     こはんの
  かっこう     かっこう     もりの
 かっこう     がなく      かげから
静かな湖畔の
森のかげでふたり
かっこうになってなこう
輪唱しよう
すこしずつずれ
おくれておいかけて
しなやかにからだをむすびあい
輪をつくりころがろう
こどもにかえれないから
いまふたりのからだをまるい口にし
いつまでも静かな湖畔の森のかげで
かっこうのうたに耳を澄まし
ねむっている草花たちの目をさまさないよう
まだおきちゃいやだとくちづけし
輪になって抱きあおう


*スイス民謡、歌詞:東京YMCA



「 輪になって 」( 了 )

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