高畑耕治詩集『愛(かな)


ちゅうりっぷ

こころから話しあえる友達って
そんなにいないね 好きだけど
あの子の唯一の欠点は
写真狂なの

写真とろうよ
おなじぽおずでさっき
写したばかりじゃない
いまのは 赤でしょ
そのまえは黄色
この白いちゅうりっぷのまえで
写したいの

だれだってどの花だっておなじじゃないもの
いろあせてゆく 白い花
あやふやでもろい 赤い花
くずれそうでこわい 黄色の花
シャッターをなんども押して
消えてゆく瞬間をつなぎとめて

指が痛くなるほど写したから
いいかげん嫌になったわ
あの子 入院してるおかあさんに
仕送りしてる 夜働いて
朝までむちゃして飲んで
からだこわしたら
写真しかのこらない

ぼくも写真は嫌いだけど
きみの友達は好き
風に髪をなびかせ笑いあった
友達ときみは
瞬間のふちどり
記憶のキャンバスに
いつまでも揺らめいている
ちゅうりっぷ



「ちゅうりっぷ」(了)

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