高畑耕治詩集『愛(かな)


(かな)@

信じられないって 愛(かな)の口ぐせ
信じられないって口をすぼめ
えくぼが浮かぶ笑顔はほんと
かわいい でも
信じるってひとこと
泣顔をみたい

ぬぎすてるよろこび
ぬがしてゆくときめき
ぬがされるむねのふるえに
こころはふくらんでゆき
陽射しをはだに
雨つぶをはだに
風をはだに
雪をはだにあびていたい
はだかになったらかぜをひくよ?
あいしてしまったから
雨傘も日傘もいらない

(かな)
いまこうしてふたり あいあい
してることだけが
真実なんだ

信じられないっ


ほんとだよ

ほんと?

うん

そのうそほんと?

うつむくと笑顔さえかなしく
うつくしい
なにをみているの?
とらえられないひとみは
みえなものをさがしあぐねて
ぬれていて ゆれていて
かたくだきしめても
つよくくちづけても
とどかない
どうせおちてゆくのだから
うつむくより 鼻のあながはずかしくても
みあげていようよ 空の星を
せいいっぱいがまんして
ためこんでも
まつげをうつし
まぶたをこえて なにかが
あふれだしこぼれおちてゆくね

信じるってどういうこと?

ひとつのほんとをさがして
うそを生きてみることかな?

ほんと?

ほんとかな?

だから愛(かな)
うそを生きていこうよ
だまって
はだをふれ
ぬくもりをあたえ
てのひらとゆびさき
ひとみとくちびるで
息をふきかけ
鼻をふくらませ
耳をぴくぴくひらき
においにすいよせられ
舌をはわせ
声がうまれるからだの
おとで
はだかのまま
はなしかけて

(かな)
真実なんていらないから
信じられないって いつもの
えくぼをみせて


「 愛 」( 了 )

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