高畑耕治詩集『海にゆれる』


こな雪

海にこな雪ふるふる夜には
波にかえった生きものの
やすらいでいた
ねがいがしずかに浮かんできます
あおい波まにさかなたちの
しろい精子は雪になり
やさしく卵にふりつもります

月のひかりがあかるい夜には
波は川へとさかのぼり
さかなたちはみなもにはねます
ちゃぽりぷちゃ
月のひかりにすいあげられて
星の波まをとんでゆき
とびはねあそぶうさぎになります

しずくいろした雨の日には
しろい乳はしたたって
海と空は交わります
月のうさぎはしろにとけ
波のまにまにまうとりの
はねの花びら波にちります

星のひとみがまたたく夜には
さかなはみんなねむります
まどろみゆれる
ゆめの波まに あいいろの
くじらのうたがきこえてきます

こな雪 海にふる夜(よ)には
波にかえった生きものの
やすらいでいた
ねがいがしずかに浮かんできます
あおい波まにさかなたちの
こわれたからだは雪になり
海の記憶にふりつもります



「 こな雪 」( 了 )

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