高畑耕治の詩


考えるカエル
  ― 死生音楽、オタマジャクシの



四.オタマジャクシの愛のうた


「 ほら聞こえるでしょ

 陸のうえ田んぼも埋めつくされ
 コンクリートとアスファルトでガチガチの
 乾燥しつくした生きがたい
 都市にもまだ
 せつない恋の
 かなえられない悲しい愛の
 涙の滴のおんぷ
 オタマジャクシはけなげに
 こころ奏で
 泳いでいるのです

 ほら
 遠いとおい海の波間から
 あなたの憧れの
 おおきなオタマジャクシ
 クジラの哀しい声
 ああいま
 うたってる

 ほら夜空にも
 虹のようにおおきくたわんで
 美しいうた
 ふるさとのなつかしい
 天の川のしらべ
 星のオタマジャクシの
 きらめきのつらなり
 涙の滴の姿で
 清らかに
 ゆらめきふるえ
 愛しいクジラのうた
 ひびかせて

 いのちはわけもわからず
 泳いでゆくオタマジャクシ
 宇宙の五線譜に
 いちどかぎりの旋律
 描いてる

 ほら
 お月さまはオタマジャクシ
 かわいいおんぷ
 あおい地球と
 手をつなぎふたり
 またたく太陽めぐります

 水と金と火と木と土と
 天と海と
 地獄の冥王と
 みんなぴちゃぴちゃ
 星のオタマジャクシ
 波紋の黒髪
 らせんになびかせ太陽と
 天の川銀河を
 めぐります

 ぐるぐるくるくる
 めがまわる

 月も地球も兄妹星も太陽も
 天の川銀河のおんぷ
 アンドロメダ銀河と
 惹かれあい結ばれ
 あわあわ
 銀河楽章
 めぐってゆきます

 ぐるぐるクラクラ
 カエルのわたしも
 めがまわる

 見渡せばあちらこちら
 愛しあうオタマジャクシ銀河の
 果てしないつらなり
 めぐりあい
 抱きあい
 せつなく鼓動
 ときめかせます

 どくどくどきどき
 胸の銀河も
 きゅんとなく

 たとえ跳ねるあなたがお月さまに
 届かなくても
 この地にしばりつけられていても
 あなたはいま
 美しい音楽のオタマジャクシ
 こころの
 ひかりのおんぷ
 星とひびかせ
 めぐっているわ

 星めぐり
 宇宙めぐり
 時空めぐり
 こころめぐり

 前世現世来世を
 地獄穢土天国を
 永遠をいま
 旅しているわ

 不思議ばかりめぐる死生音楽の
 わたしもおんぷ
 オタマジャクシ
 月に跳ねるあなたが
 好きよ

 めぐりましょうね
 泳ぎましょうね
 かえりましょうね

 クジラに憧れるばかりの
 涙ひと滴の姿の
 ちいさないのち
 愛しみのオタマジャクシであるまま 」




* ルビ 陸: おか。愛しい: かなしい。愛しみ: かなしみ。



「 考えるカエル 四.オタマジャクシの愛のうた 」( 了 )

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