高畑耕治の詩


うた。満ちゆく月の、潮騒の。反戦の。


(2) 三日月お月さま


目覚めればなんともはやひどい
社会
でありました
苛めも略奪も差別も人殺し殺生も
星の破壊も
ふつう
でありました

不正がバレても詫びず
数の力だなんたらと
やりすごし誇り驕りかえることが
流行です

息ができず苦しむ
ひとりひとり

ああこんな汚い社会にもまだ
人はいるんだと
ひとりごと

浸された泥水の鏡に映るわたしに
自問します
このゆがんだ生き物は
まだ人?
もう人でなし?

醜さと憎しみの臭気に麻痺しながらも
遥かとおくに想い馳せれば
美しいもの
愛するということ

そのような
なにかしら
ほらあの三日月お月さまの
やさしく素直な
カーブのように
大切
と思える
カケラ
こころの片隅に
かがやいているような
気もします

「 思いだせるのならまだ
 生きているよ 」 と
三日月
キララ

「 生きることはおそらくまだ
 できるよ 」 と
やわらかに鋭くわたしに
話しかけてくださいます

「 人らしく
ありたい願いを 」

お月さま
ささやくのです

「 人ごとだからと
 見殺しにしてしまうこんな
 人でなし社会にも 」

お月さま
照らしだすのです

「 人はいます 」

こころにやどる
月の精も
輪唱し

「 人はいます
   人はいます
     人はいます 」
人ごと
では
ひとりごと
ではもうありません

月のひかりに誘われ
月の精は舞いあがり
夜空たかくから
ちいさなこの星を眺めます

あおい海の鏡には
三日月お月さまの姿まるで
映っているよう
ゆるやかなカーブで連なる
ちいさな列島

うすあかりに
浮かびあがる都市も街も村も
よくみるとそこらじゅう
火の海でした

お月さま
人の声はきこえますか?
人はまだ生きていますか?




「 うた。満ちゆく月の、潮騒の。反戦の。(2)三日月お月さま 」( 了 )

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