高畑耕治『死と生の交わり』


交わり ひとりであること

(6)


ジャングルジムやお城のすべり台
子供たちが飛び跳ねていた数時間後の
公園の闇のなか あのひとに出会った
蓮の華のような台座のうえに あのひとはいた
両手をすりあわせ 足をくみ 顔をあげ
読経を 何度もくりかえしていた

数十分後 公園の別の一角で休んでいたわたしの近くを
あのひとは歩いていた
暗闇のなか
星空をみつめ つぶやきつづけていた
「問題は万有引力、万有引力が
 ガリレイが
 それで マグマが爆発して グワーとすべてが

わたしには あのひとの宇宙が見えない
あのひとは あのひとだけの宇宙を抱き
今日も 明日も 言葉と沈黙を 吐きつづけるだろう
あのひとの宇宙のなかで生きつづけるだろう
わたしと同じように



「 交わり―ひとりであること ( 6 ) 」( 了 )

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