高畑耕治『死と生の交わり』


交わり ひとりであること

(5)


わたしがわたしと交わりながら
偽善よりはと 偽悪的に
けがれた美しさよりはと 醜悪さの泥をぬりたくり
傲慢よりはと 自己卑下にまみれ

ねがいとしてだけは胸に抱いているつもりでいた
 ほんとうによいこと
 ほんとうに美しいもの
 ほんとうの強さである弱さ
 ほんとうのやさしさであるきびしさ
そのような心象さえ
しだいに見失われてゆき
交わりに息吹きをあたえる
 肌のやわらかさあたたかみも
 息づくうごきも
触れては離れる距離も
失われ
ひからび閉ざされた動きのないどこともいえないところで
屍のようにほうりだされ
このようなわたしはなにものでもないと
さがしもとめるときにだけ光り生まれでる意味を
なげすててしまおうとするとき

あなたとの交わりが
わたしに 勇気を
わたしと交わることへの勇気を与えてくれる

わたしとの交わりを 矮小で偽悪的な醜く下卑たこりかたまり・傲慢な甘えにしてしまえば
あなたと 生きた交わりがもてないから
屍のなかでは あなたも生きていてくれないから
あなたを 殺したくないから
わたしは わたしと 生きた交わりをもちつづけたい
交わりを息づかせる ねがいを 胸のうちであたためつづけたい

脈づきだした鼓動の響きと血の流れを感じ
あなたを抱き
あなたに抱かれたい



「 交わり―ひとりであること ( 5 ) 」( 了 )

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