高畑耕治『死と生の交わり』


祈り

(1)


わたしは まだ 死なない
みにくく 生きのびながら
< 生きものの感受性をふかめてゆき >* 
人間の わたしの感受性をふかめてゆき
苦しみをすこしばかり
このわたしに耐えうるかぎり苦しみをかじり
絶望し死んでいったひとと 死のなかで
交わりたい
そんな欺瞞を 信じたいけれど信じられず
それでも
そのひとたちのように
ひとり わたしに耐えうるかぎりの苦しみをなめたら
わたしを 赦してやる
赦してください

 痛いのは いやだ
 永劫の責苦なんて たまらない

< あなた >はあまりに力にみちあふれ全能であり何をしてもかまわぬにしても
人間なんて 何ものでもないにしても
人間を苦しめるのは<あなた>ではなく
人間であり 罪は
弱く愚かな わたしのような
人間にしかないにしても 自分自身にしかないにしても
< あなた >は ひどすぎる
わたしは憎む

 痛いのは いやだ
 永劫の責苦なんて 耐えられない

< あなた >など 信じたくはない
わたしなど 信じられず
人間など 信じられはしない
けれど わたしは
信じても この地上では
加害者であり被害者である
より多く加害者である 人間

「 だから そうでしかありえないから
  信じる 信じたい 信じずにはいられない」
「 けれど そうでしかありえないけれど
  信じない 信じたくはない 憎まずにはいられない
自分にたいする憎悪の 自分の限界からあふれでるものを
人間にたいする憎悪の 人間の限界からあふれでるものを
< 被造物 >でしかありえに憎悪の やりばのない憤りを
< あなた >にむけずにはいられない


*「 新鮮で苦しみ多い日々 」堀川正美


「 祈り (1) 」( 了 )

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