詩人 田川紀久雄

詩集『かなしいから』から

なみだとにじ


かなしくて かなしくて
かなしくて どうしようもないので
ないた
なみだがいっぱいでてきた

なみだで かなしみはいくらか
なぐさめられた
かなしみはなみだとともに
そらのかなたにきえた
そらにはにじがでた
なみだのあめが
こころをあらったのかもしれない
すずめが
こえだにとまってないていた

          (二〇〇五年四月十四日)


かなしいから


かなしいから
あなたのくるしみがわかる
かなしいから
あなたのさびしさもわかる
かなしいから
あなたのこころのあたたかさがわかる

かなしいから
わたしはすなおでいられる
かなしさは
わたしのたから

かなしいから
せかいのひとたちとともだちになれる
かなしいから
あなたのしあわせをいのらずにはいられない

          (二〇〇五年四月十五日)


ほっきこう


かりがむれをなしてとんでいるすがたはうつくしい
しかしどこかものがなしいものをひめている
いちわみずべでえさをさがしもとめているすがたは
どこかあいきょうのあるどうけしのようだ

はねをはばたかせてとびたつとき
このちきゅうのかなしみをぬぐいさるかのように
ゆっくりとちゅうにまいあがる
ひとはそのかなしみをてにとることはできない

かりのかなしみは
ひとのかなしみよりふかい
たびからたびをつづけるあいだに
かなしみがかりのからだにこびりつくためかもしれない

わたしのかなしみは
ちいさないきもののおもさにかなわない
かりがむれをなしてきたのそらへとびたっていく
そのうつくしさにわたしのかなしみはすくわれる

          (二〇〇五年五月二十四日)


著者 田川紀久雄(たがわ きくを)
1942年新潟県刈羽郡北条生まれ。
田川紀久雄は幾多の詩書を発表しつつ肉聲による独自の詩語りライブを1985年から全国各地で行なっている。画家でもあり油彩画の個展は約20回を数える。
また出版社・漉林書房の発行人として多くの詩人の詩書を世に送り出すと共に、詩誌『操車場 詩と評論』で作品と闘病記「末期癌日記」を発表している。
私が共感をする言葉に満ちた田川さんのブログは次のURLから読むことができます。

漉林書房通信・詩語り「田川紀久雄日記」

著作
童話集:
『小さな町の物語』(1981年、漉林書房)。
エッセイ集:
『詩語りの現場報告』(1988年、漉林書房)、 『続・詩語りの現場報告』(2003年、同上)、 『詩語りの現場報告・V』(2003年、同上)、『詩人のための朗読講座』(2005年、同上)。
詩集:
『火事ですよ』(1982年、漉林書房) 、『道標』(1984年、同上) 、『新伊勢物語』(1985年、同上) 、『越後』(1985年、同上) 、『峠の風』(1986年、同上)、 『風土記』(1987年、同上) 、『炎』(1988年、同上) 、『失われた風景』(1989年、同上) 、『風の唄』(1991年、同上)、 『一つの愛に向けて』(1994年、同上) 、『冬の旅』(1996年、同上) 、『生きる証』(1998年、同上) 、『泉谷 栄論』(1999年、同上) 、『津軽まで』(2000年、同上)、 『寂寥はどこから』(2001年、同上) 、『翔び立つ日を夢見ながら』(2002年、同上) 、『音を聞きに出かける』(2003年、同上)、『種田山頭火を詠む』(2003年、同上) 、『時代』(2004年、同上) 、 『田川紀久雄全詩集 第一巻』(2004年、漉林書房) 、『田川紀久雄全詩集 第二巻』(2004年、同上)。
『かなしいから』(2005年、同上) 、『道化師』(2006年、同上) 、『見果てぬ夢』(2007年、斑猫書房)、 『生命の旅 第一章 生命の旅立ち』(2008年、同上) 、『生命の旅 第二章 生命の尊厳』(2009年、同上)、 『生命の旅 第三章 生命の歓び』(2009年、同上) 、『未来への旅』(2010年、同上) 、『祈り』(2010年、漉林書房) 、『いのちの聲』(2011年、同上)、 『鎮魂歌 東日本大地震のための応援詩』(2011年、同上)、『神話の崩壊』(2012年、同上) 。

掲載されている詩の著作権は、詩の作者に属します。

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