高畑耕治『死と生の交わり』


ひと

老人の死をみつめる時間のまぢかで
心とからだに苦しめられる人びとのまぢかで
愛されること愛することを
全心 全身で みつめもとめる生命(いのち)にむきあい
他者をもとめずにはこばまずには
生きられない自分を感じつくした他者とむきあい
食事 排便 入浴
ひとつ ひとつ かみしめる時間

他者の生のうちに 他者のためであることが
同時に 自分自身のためでもある
何かをつかみとろうとする ひと

あるがままのひとの姿を大切にする ひと
<人類>をではなく<人間>という抽象名詞でもない
生の偶然のうちに出会ったひとの 心とからだ
ひとつきりだから あまりに
卑小で
かけがえのない
あるひとを
愛しうるひと


「 ひと 」( 了 )

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